〜悩める人への読む薬〜
　結婚と幸せについて触れた本　　　２００７年６月６日

６月の花嫁（ジューンブライド）は幸せになる・・・というのは映画の中のセリフ。夫婦の幸せは、二人、つまり自立した二人の大人が、当人どおしで作るものだと、今改めて感じています。

　●神に愛され選ばれたアルムスタファが、神の使命を終えてある町を去る日に、彼を信じ、心から彼の存在を求めた町の占い師アルミトラが、彼の去る前に様々な真理を尋ねる。「結婚について話してください」というアルミトラの求めに応じたアルスタファの返事。
　―あなた方は共に生まれ、いつまでも共に過ごす。白い死の翼が二人の世界を分かつときまで、あなた方は共に過ごす。あなた方は神の静かな思い出の中でさえ、まぎれもなく一緒だ。だが、そのようなふたりでも、間に距離をおきなさい。そして二人の間に、天からの風を吹かせなさい。・・（中略）・・・
一緒に歌い、踊り、喜びなさい。だが、互いにひとりになるが良い。ちょうど琴の弦が一つの音楽を奏でながら、それぞれ別のものであるように。・中略・
そして共に立ちなさい。互いに近寄りすぎてはならない。神殿の柱は離れて立ち、樫と杉の木は、互いの陰では育たない。―
（「生きる糧の言葉」ジブラーン著　岩男寿美子訳原書名は「預言者」）

　この数ヶ月、相談や、自身の悩みのようなことを打ち明けられることが男女を問わず続きました。それらのほとんどがご自身の今後の身の振り方、心の持ち方について混沌とした気持ちで過ごしていらっしゃるというものですが、結婚生活に関連しているように思えるものばかりでした。正直な所、独り身の私には、パートナーが居るだけでも幸せだということを長い間切実に感じてきているので、「贅沢な悩み」とも思います。けれども、そう、自分がクリアした問題であっても、目の前に悩み苦しんでいる方がいるので、親身になって話をお聴きしました。

　たまたま数人の悩みを私が共有してしまったからでしょう。もし求められたなら、なんとか私自身の考え方や意見を言えるようにしたいと思って、古い本を何冊か読み返したのです。何故なら、相談された内容と同様の苦しみについて、私自身は誰にも相談できず、書籍の中の言葉によって沢山のことに気づき、自分を変えていったからで、当時の私の心境は過去のどこかの部屋に閉じ込めてしまっていて、思い出さないようにしていたからなのです。本当に親身になって聴くために、勇気を出して過去の自分と向かい合おうと思いました。そうしているうちに、私自身もまた客観的に変化した自分を観察する機会を得ました。

　加藤諦三先生の「結婚生活の心理」には、付箋が一杯貼ってあり、各章の文章にはところどころ蛍光ペンで線が引いてあります。自分が精神的にいかに未熟かを知った教示の部分でした。厳しい言葉で「こういう人は、こんなふうに思う。何故なら・・・」というものです。
家庭生活と職場の人間関係などへの不満と自分の将来のことで不安が一杯のＡさんに、この本の内容を一気に話したい衝動に駆られますが、今、第三者として見ていて決して不幸せな環境にいらっしゃるとは思えないこの女性に、この本が私と同じ効果をもたらすかは疑問です。

私は、変る事ができて良かった！私の身に起こったことは、決して愛する子どもたちに経験させたくないことばかりでしたが、その大事件でもなければ私自身は変わることはできなかっただろうと思うばかりです。

ニューヨークのジャーナリストで、私がラジオで知って買い求めた千葉敦子さんの著書は、大人の女性の考え方、人間としての平等の考え方などを私に教えてくれました。幼稚な上に、封建的な考え方（知識）で一杯の私が、そのために自らを苦しめていたことを知らされた本でした。この内容は、権利意識の強いＢさんにはむしろ不向きでしょう。これも私には薬になった本です。

何冊かの本をざっと読み返しているうちに、小さな翻訳本の内容に心が惹かれました。そのひとつが上の一節です。

悩みや苦しみの真っただ中にいたときには、この本の中にあふれる愛の言葉、人生の教示が目に入らなかっただろうと思います。どんなに素晴らしいことが書いてあっても、その中の言葉を受け入れる準備ができていなければ、ただの文章でしかないということですね。他の人のためにと思って本を読み返したのですが、思いがけず、私の良薬投与となりました。

「読む薬」という題の書籍がベストセラーになったのは２０年ほど前のことです。