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2006年9月19日

百歳の肖像

昨日は敬老の日。

NHKの19:00のニュースに続き、「百歳の肖像 老いを生きる」というテーマで、先ほど「クローズアップ現代」という番組が放映されていました。

北九州市の写真家が、100歳の方々の写真を撮影し、毎年敬老の日の前にお届けしているとのことです。北九州市が協力して該当者にお知らせし、本人(ご家族)の希望があれば、その方が一番くつろげる場所(住居)に出向いて撮影し、肖像写真にしてお渡ししていらっしゃいます。この写真家のお父様の代から50年以上続いている無料提供だそうです。今年の希望者は50余名。写真家の奥様と二人三脚で撮影をしていらっしゃるとはいえ、温かい心がなければ決してできないこと・・・なんとも素敵なことをなさる方があるものだと、番組を見ていました。

 肖像写真に写された方々のうち、数名の、様々な100歳の「今」が紹介されました。私は、もし母がまだ生きていたならば、この番組を見ながら「人間の生き方」「老い方」に一番関心をもったことでしょう。今も、もちろん関心はあるのですが、今夜は違いました。

 映し出される100歳の方々のにっこり笑った目の表情に母を見ました。私は胸がぐ〜っと詰まる気持ちがして、たちまち涙がこみ上げてきました。

次に画面に写された、口をぽかんとあけた横顔は、焦燥感に疲れてぼんやりしているときの母そのものでした。私はまるで、台所からその母の横顔をみていた、その時のような感覚に襲われました。骨ばったその手の甲や、力のない指が、母の手に見え、少し変形した爪を切ってあげたときの感触をおもいだしました。母の細い細い白い髪、つるつるしたピンク色の背中、むくんだ冷たい足。支えている私の腕を握る母の手の力。頼る重み。それらが、現実の感覚として次々とよみがえってきました。

「ああ、もうお母さんを喜ばすことができない・・」心の奥深くで、そう感じました。嗚咽をこらえることができません。母の遺影にお線香をあげても、どうしようもなく悲しく、涙をとめることができませんでした。位牌には21年前に亡くなった父の戒名があり、真新しい母の戒名が並んでいます。私は今日、父も母も他界したことを、初めて現実として受け止めたような気がしました。もっともっと親孝行したかったのに・・・。

可能な限りの介護を続け、それが当たり前になっていて、こんな風に過去のものとして振り返る日がくることを考えまいと頑張ってきたからでしょう。介護はとても大変な時も多く、「過去」や「未来」など、考える余裕なく過ごした8年間でした。

季節の変化など、これから何かにつけ、こうして思い出しては泣くのでしょうか・・。母の生い立ち、戦争の経験、年老いての都会での一人暮らし、母の生きた時代・・・決して母だけではないし、他の女性より幸せだったこともたくさんあったはずの母です。でも、今は「可哀想だった」としか思えません。

認知症が進み、「100歳の肖像」の写真撮影を依頼するかどうかためらったご家族の方が、決断した理由。「100歳生きたことがお母さんの誇りだから」と。ずっと見守っている方だからこその言葉、と思いました。

30分間のこの番組に、温かい心があふれていました。

私の涙は感動の涙に変っていました。ますますのご長寿と皆様のお幸せを祈る気持ちでいっぱいです。NHKさん、素晴らしい特集をありがとう!



老犬ジョリー






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